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イベント情報

ナカムラクニオの〈金継ぎ〉ワークショップ

2021年05月09日

美術館|ワークショップ・アートプロジェクト・募集

こちらのワークショップは開催終了しております
同様の7月開催分については、こちらをご覧ください → ナカムラクニオの〈金継ぎ〉ワークショップ

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いま国内だけでなく、世界でも注目を集める「金継ぎ」。
割れたり欠けたり、ヒビが入ったりした陶磁器を漆などで接着し、金や銀粉で美しく装飾する「金継ぎ」は、日本古来の修復技法であると同時に、モノに宿る記憶や想いを蘇らせ慈しむ造形表現でもあります。
ブックカフェ「6次元」店主・ナカムラクニオさんは、本・骨董・美術にまつわる執筆活動のかたわら、「金継ぎ」をより身近な創作行為として普及させる活動に取り組んでいます。
まなびあテラスでは開館から5周年を記念する展覧会として、この秋、ナカムラクニオさんと東根市民による「金継ぎ」展を準備中です。ナカムラさんが手掛ける「呼継ぎ」の陶アート作品と、東根市民の器にまつわる物語の収集・再生プロジェクトを通して、10年前の東日本大震災と、現在も続くコロナ禍を経て、モノに対する向き合い方が大きく変化する現代における「金継ぎ」の新たな可能性を考えていきます。
秋の展覧会に先立ち、5月に下記の内容で実施するワークショップでは、市民の皆様から「金継で修復したい」器とエピソードを募集します。ご応募お待ちしております。

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本ワークショップは開催終了しました
開  催  日:2021年5月9日[日]
時       間:A枠=12:30~15:00|B枠=16:00~18:30(定員各枠20名)
講       師:ナカムラクニオ、宮本武典(企画/まなびあテラス芸術監督)

参  加  費:無料
申込 方法:下記の応募条件をお読みいただき、企画内容に賛同・ご協力いただける方は、以下の方法にてお申し込みください。(応募にあたって、いただいた個人情報は、本ワークショップをふくめた展覧会にかかる当館の運営管理目的以外には利用いたしません。展覧会終了後2か月まで当館にて保管し、責任をもって処分いたします。)

ワークショップの申込受付は終了いたしました
申込 期限:いずれも 2021年4月25日[日]必着

  • メールでのご応募
    • まなびあテラス(info@manabiaterrace.jp)あてにメールにてご応募ください。
      • メールには「参加される方のお名前」「ご連絡先のお電話番号」「参加を希望する時間枠(A/B)」「金継ぎしたい陶磁器についてのエピソード(200字程度)」を記載の上、「金継ぎしたい陶磁器の現物写真」を1枚以上添付してお送りください。
  • 専用の申込用紙でのご応募
    • まなびあテラスにてお配りする、専用の申込用紙を記入の上ご持参ください。
      • 用紙には「参加される方のお名前」「ご連絡先のお電話番号」「参加を希望する時間枠(A/B)」「金継ぎしたい陶磁器についてのエピソード(200字程度)」を記載の上、「金継ぎしたい陶磁器の現物写真」を1枚以上貼付してお持ちください。

●参加・応募にあたってのお願い
本企画は「金継ぎ」の文化や技法をご紹介するだけではなく、壊れてしまった陶磁器についてのエピソードや、これを参加者が自らの手で修復・再生していく様子を写真やインタビューで記録し、展覧会と冊子にまとめていくアートプロジェクトです。ワークショップに参加希望される皆様は、下記1~8について事前にご了解のうえご応募ください。

  1. 東根市内に居住・通勤・通学されている方に限ります。 (2021-04-18 変更)山形県内在住の方に限ります。
  2. 応募時に、金継ぎしたい陶磁器についての、200文字程度のエピソードと、現物の写真を必ず添えてください。
  3. 金継ぎで直す陶磁器は原則としておひとり2点までとします。(※かぶれ防止のため本漆ではなく、新うるしを使用します。また、食品衛生法に適合した材料を使用します。)
  4. 応募多数の場合、2.の内容をもって参加者を選考します。
  5. ワークショップで修復した陶磁器は、当館で開催する「金継ぎ展・仮称」(2021年10月20日~11月28日)で展示します。
  6. 5.の会場にて、お名前とエピソードも紹介します。また、展覧会とあわせて発行するリーフレットにも、同様の情報を掲載する場合があります。
  7. ワークショップの模様や作品を撮影し、展覧会、展示チラシ、活動報告書、広報誌、ほかメディアに掲載する場合があります。
  8. 金継ぎした陶磁器は、展覧会終了後にお返しします。

 

●講師プロフィール
ナカムラクニオ……1971年東京生まれ。荻窪「6次元」主宰。著書に『金継ぎ手帖』『古美術手帖』『チャートで読み解く美術史入門』『モチーフで読み解く美術史入門』『描いてわかる西洋絵画の教科書』『洋画家の美術史』『こじらせ美術館』などがある。2008年から陶磁器修復技術「金継ぎ」の普及活動をはじめ、東北、熊本などの被災地やアメリカなどでワークショップを開催。映像作品『Kintsugi PIECES IN HARMONY』は、ADFEST 2018(第21回アジア太平洋広告祭)デザイン部門でシルバーを受賞。資生堂の世界CM「The redefiniton of Japanese Beauty by Shiseido」に金継ぎの器を提供。ドキュメンタリー映画「Kintsugi」はダマー国際映画祭、サンダンス国際映画祭で上映。2019年には、画家マコトフジムラと共同で金継ぎの学校「キンツギアカデミー」をロサンゼルスに設立。

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●講師メッセージ

「不完全」という名の「完璧」を探して/ナカムラクニオ

1|景色としての「金継ぎ」
器のヒビ割れは、ドラマチックな風景画です。壊れた場所に「金」が入ると、暗闇に雷が光り、黄金色の川が大地をうるおします。木の枝が大空に伸び、新たな景色が生まれるのです。かつて茶人たちは、わざと器を割ってから直し、金でつなぐこともありました。キズを「美しい自然」に見立てる粋な遊び。それが「金継ぎ」なのです。
金継ぎは、割れたり欠けたりした陶磁器を、樹の樹液である漆で接着し、継ぎ目を金、銀、朱色などで飾る伝統的な修理方法として知られています。歴史的には、15世紀頃、漆器の技術を応用して、はじめられたと言われています。
「馬蝗絆(ばこうはん)」という有名な青磁の茶碗があります。12世紀頃、中国から贈られた貴重な宝ものです。15世紀になって、その青磁の茶碗は、将軍、足利義政の所有となりました。その茶碗にひび割れがあったので、「これに代わる茶碗が欲しい」と中国に送りました。しかし、「同じような青磁茶碗は作れない」と言われ、茶碗のひびを金属の「鎹(かすがい)」で止め、日本に送り返してきたのです。この茶碗のかすがいは、馬の背中に乗ったイナゴに見立てられ「馬蝗絆(ばこうはん)」という銘が付けられました。しかし、これがきっかけで漆器の技術を使い、さらに美しく直す方法を考えだしたのが「金継ぎ」だもと言い伝えられています。

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2|「不完全」という名の完璧さ
金継ぎの哲学においては、不完全さの中にこそ美しさがあると考えます。これは、茶道の世界で使う「わびさび」と呼ばれる概念から生まれたものです。
「わび」とは、簡素の中に見いだされる静寂のこと。「さび」とは、時間が経って、風情があることです。元々は、中国の宋王朝(960~1279年)の時代に道教(Taoism)から生まれ、禅仏教に取り込まれた思想です。
16世紀になると、茶道は、茶人である千利休によって完成され、日本の美意識の原点のひとつになりました。それまでの茶の湯は、唐物と呼ばれる中国産の高級な茶器がもてはやされてきましたが、茶人の武野紹鴎や千利休は、朝鮮の庶民が使うキズだらけの日用雑器を、茶道に取り入れました。「わびさび」は、無造作に作られた造形、ゆがみ、ひび割れや欠けに美を見出し、景色をめでる新しい美意識のはじまりだったのです。お茶を飲む茶室も非常に質素で、装飾的要素を排除した造形美でした。それは、近代建築の父とも言われるル・コルビュジエが両親のために作った、ミニマルな美意識を持った 「小さな家」にも似ています。

 
3|欠けた部分を「想像力」で直す
「金継ぎ」の本質とは、いったい何でしょうか? 単なる修理や修復とは、まったく違う行為だと感じます。ただ壊れたものを接着するということであれば、日本人は1万年前の狩猟採集の時代(縄文時代)から、漆を使って焼きものを修理していました。しかし、茶道を極めた茶人たちは、少し違っていました。ヒビの中に、山水画的な得体の知れない美が宿っていることを見抜き、欠けた部分を想像力で「直す」ことをはじめたのです。 壁の割れ目にも、錆ついた鉄の中にも「壮大な景色」を探し、ありがたがる想像力の大切さを発見したのです。茶人たちは、庭に砂を盛ることで、大海原や宇宙に思いを馳せる遊びの思考「見立て」を発見し、キズこそが美しい景色をつくる大事な「絵筆」となることに気がついたのです。
小説家の谷崎潤一郎は、随筆『陰翳礼讃』に興味深いことを書いています。「(黒い)漆器の肌は、幾重もの『闇』が堆積した色であり、周囲を包む漆黒の中から必然的に生まれ出たもの」だと。そして、蒔絵に金を贅沢に使った理由は、「乏しい光の中における効果を狙ったものだ」と書きました。つまり、金継ぎも元々は、周囲を包む暗黒の中から必然的に生まれてくる「光を探す行為」だと言えるかもしれません。

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4|「無用の美」を愛でる
金を使った繕いには、大きく分けて2種類あります。継ぎ目に金や銀などを蒔く「金継ぎ」と、破損した陶磁器を、パッチワークのようにつなげる「呼継ぎ」です。「呼継ぎ」は、まるで言葉遊びのように、別々の陶片をつなぎ合わせることで、お客さまを楽しませることができます。衣類の穴あきを修繕するイギリスの「ダーニング」という技術もありますが、西洋美術の世界ではキズは、きれいに隠す「修復」が一般的です。金でキズを目立たせる金継ぎのような「再編集」行為や、呼継ぎのような「再組織化」の技法は、多くありません。
金継ぎで、大切なのはキズに対して「味がある」と感じることです。つまり、われわれ日本人は、古びて、キズがあった方が「かっこいい」と考えるのです。「キズ」を「味」と呼ぶ美意識と「無用の美」を愛でる感受性があれば、世界が違ってみえます。 完璧であることを求めないとき、壊れたものに美を見いだす時、人生の価値観も変化し始めるのです。
金継ぎの本質とは、「壊れものとしての自分」を受け入れる技術です。金色に輝くひとすじの線は、過去と未来をつなぐ光の糸なのです。

5|「コラージュ」という美学
日本には「見立て」という考え方があります。割れたヒビや鉄の錆も「景色」と呼び、感謝するのです。そして、もうひとつが「コラージュ」の文化です。日本は歴史的に中国、韓国、ペルシャ、さらにオランダ、ポルトガルなどの影響を受けたミックスジュースのような国なのです。ロシアの映画監督エイゼンシュタインは『日本の伝統文化は、皆モンタージュ的である』と言いました。金継ぎや呼び継ぎを体験すると、日本の文化の核心に触れたような気がするのは、このようなリミックス感を実感するからなのかもしれません。
日本でも東北地方の人々は、衣服を美しい文様の刺繍「刺し子」で飾ります。そして、この刺繍には、寒さを防ぎ、補強する役目があります。この刺繍も、金継ぎと同じ考え方です。古い着物の修復をする時には、ほつれや穴をひとつの「景色」として捉え、物語を作って直します。何かが壊れた時に、自分なりに風景や意味を付け加えながら修理をするという行為は、新しい価値を生み、自分の精神も含めて修理することになるのです。

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6|「金継ぎ」という、ささやかな魔法
金継ぎをはじめてもうすぐ20年。これまで何千もの割れた器を修理してきましたが、いつも不思議に思うことがあります。器の値段は500円ほどなのに、みな5000円を払って、修理をするのです。いったい金継ぎをしたい本当の理由は何なのだろう、と。おそらく、直したかったのは、「自分自身」なのだと思います。金継ぎは、そんなささやかな大切なことに気がつくための時間なのです。
焼きものは、記憶のかたまりです。あらゆる記憶が、器の底に静かに、降り積もっています。職人さんの手のひらの記憶。窯の中でゆっくり焼かれた記憶。誰かに使われ、長く愛された記憶。みんなが、直したいものとは、その記憶の断片なのです。何度壊れても、そのキズを受け入れる「金継ぎ」という、ささやかな魔法を知っていれば、何かが壊れた時に、心が少し楽になるのです。

カナダの詩人レナード・コーエン(Leonard Cohen)は、こんなことを言っています。

”There is a crack in everything.That's how the light gets in.”
(どんなものにも、ヒビがある。だから、そこから光が差すんだ)

たぶん金継ぎとは「何かを再生する儀式的な行為」によって、「精神的つながりを修復し、自己治癒を行う」ことなのです。世界中のみんなが自分の身体の古傷を慈しむような気持ちで、金継ぎを気軽に体験できたらうれしく思います。

 

 


2021-04-18 ワークショップの応募条件を一部変更いたしました


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美術館 「金継ぎ」展担当まで ご連絡ください

TEL|0237-53-0229(美術館直通)
MAIL|info@manabiaterrace.jp
受付はいずれも 9:00~18:00(休館日のぞく)

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